2018.10.5
ブティック・ビギ代表取締役社長 石井義勝が様々なゲストと、ファッションのこと、地域のこと、未来のことなどについて語り合います。
野澤社長は、1996年にインターネットの会社を浜松で創業、2005年に沖縄で地域密着ブログサービス「てぃーだ」を立ち上げるなど、多くのインターネットサービスを提供し、現在では国内だけではなくベトナムなど海外でも事業を展開されています。
国内外を飛び回っていらっしゃる野澤社長と、弊社代表石井の出会いから、ファッションについて、そして未来の展望までいろいろなお話を伺いましたので、どうぞお楽しみください!
お久しぶりです。今日はよろしくお願いします。
こちらこそ、よろしくお願いします。
野澤さんとはもう長い付き合いになりますね。
僕が肴町にあった”Papas/パパス”が好きで、お店に通っていた時に石井社長をお見かけしたのが最初でした。
私が浜松商工会議所の副会頭をやっていた頃…、いや、もっと前に、親しくさせていただいていた方から改めて紹介されたんですよね。うちのお客様だったこともあり、話が盛り上がった覚えがあります。
何年前かと言われると、かなり前っていうイメージはありましたが、お店に行っていた時に石井社長と何度かお会いしていて、「こんにちは」とか挨拶したことはあるんです。
僕がまだ20代の頃で、起業する前でした。当時の僕にとって石井社長は、大人で、カッコいいな、と思って見ていました。あの頃の僕はパパスのアロハが大好きで、ラフな格好をしていて、ポロシャツもよく買っていました。
野澤さんは活発な方という印象で、何をやっている人なんだろう、と思った記憶があります。当時は深くお付き合いする感じではなかったので、ひとりのお客様として。ただ、活発という印象はすごく強かったです。
その後、野澤さんは、誰もやってなかったから、という理由でインターネットビジネスを立ち上げたと聞きました。ブティック・ビギはちょうど創業25周年を過ぎた頃で、野澤さんに私と同じような熱を感じたのかもしれません。
野澤さんがファッションに興味を持ち始めたのはいつ頃から?
僕、子供の頃から自分が着る服は自分で買いにいってたんですよ。モール街のCOXなんかによく行きましたね。
あぁ、懐かしいですね。
中学校の頃から一人で街中のいろんなお店に行っていましたし、働き始めたばかりの月給は9万円ほどでしたが、肴町に買い物に行ってほとんど使っていました。
自分で着る服を昔から決めたり、いろんなお店に行かれている中で、うちのお店で買うようになってくれたのはありがたいですね。
ブティック・ビギさんのお店に通うきっかけというか、理由は、ある販売員の方との出会いが大きいです。
僕の好みをわかっているだけでなく、持っているものを知っている。買ったものを覚えてくれている。ピンポイントですすめてくれて、サイズのアドバイスもくれるので無駄がない。
10キロほど体重が増減したときでも、こことここを直せば着られますよ、と服をカスタマイズしてくれたことも。ビギさんのサービスはすごいな、と思いました。
うちの会社では、お客様が買われたものを販売員が頭に入れていて、次に来られたときに的確にアドバイスできるようにしているんですよ。そう言っていただけると嬉しいです。
ところで、野澤さんのこだわるファッションって?
僕、緑色が好きで、ライフカラーは緑色なんです。若草色のように明るい緑からカーキまで、緑ならなんでも好きです。特に靴やアウターは緑が多い。子供の頃、家の絨毯もカーテンも緑色だったことが影響しているのかも。
そうでしたか。パパスの頃から20年以上経ちますが、服との付き合い方は変わりましたか?
僕は物持ちがよくて、二十歳の頃に買った靴も捨てられない。ただスーツを着る機会が減ったので、200~300本あったネクタイはほとんど人にあげてしまいました。
親父から「ネクタイは自分で買うものじゃない」って教わったこともあって、1本も自分で買ったことないんですけどね。
100本、200本持っていて、買ったことないんですか!?
はい、プレゼントしてもらっていました。もちろん、ブティック・ビギさんのお店でも何本も。サイズが合わなくなった洋服も、着てくれる人がいたらあげちゃうんですよ。その反面、大事に扱いたいと思う服に出合ったら、ずっと着続けます。
それは洋服が活きるやり方ですね。ずっと着ていただいている服って…。
バイクウエアの「KUSHITANI/クシタニ」のシリーズです。ブティック・ビギとクシタニのコラボ商品は、ほとんどっていうくらい持っていると思います。レザージャケットは黒か白か迷って、白にしましたが、デニム調の撥水レザージャケットは全種類買いました。
私も、クシタニのレザージャケットは白を着ています。私はバイクにはもう乗りませんが、野澤さんのような現役のライダーに選ばれているのはうれしいですね。
オートバイに乗るウエアって、なかなかカッコいいものがなかった。でも、ビギさんがプロデュースするとこんなにカッコよくなるんだ!、と感動しました。普段着としてもいいですし、それでバイク乗ったらもっといいですから。本当に気に入っていて、活躍してくれています。
これからもクシタニさんとのコラボ商品は、ぜひ作っていただきたいです。同じ浜松の企業ですしね。
うれしいですね、ありがとうございます。買い物をするときのポイントは変わってきましたか?
年齢とともに好みが変わってきたこともあって、とにかくアロハのように自由でラフな服が好きだったんですが、今はどちらかというと体にフィットする服が好きになりました。
一番変わったのは素材ですね。僕がこだわっているというよりは、販売員の方が、例えば、タートルネックにしても品質の良さとは素材の違いだということを話してくれますが、手軽に手に入るウールとアンゴラ混とは全然違う。ここは僕はすごく大事にしています。
同じようなウールでも、肉で言ったらチキンナゲットのような寄せ集めの素材もあれば、ステーキ肉のような純粋な素材もありますからね。
上質なウールは、チクチクすることがなくて、フワッと包み込んでくれるようなぬくもりが着た瞬間からずっと続きます。登山家は高品質なウールの下着を着ることが多いのは、あたたかさと快適さが命を守ってくれるからなんです。
着る服の素材はすごく快適なものがいいんですが、僕、値札に書いてある素材って見ないんですよ。どこで作られているか、とか全然気にしない。
そういったところをすごい見られる方とかもいらっしゃいますよ。ご自分の判断基準をそこに委ねているんでしょうね。
僕はファッションは素人じゃないですか。この20年間担当していただいている販売員の方を信頼しているので、値段も見ないです。値段を気にしないというのではなく、価格が服を見るときの判断材料になることがないということです。
値段を見ないということは、純粋にその商品が気に入ったから買うんですよね。安いから買おう、高いから買うのをやめようという考えではないんだと思うんです。野澤さんのような人は、値段の情報に、自分の判断を左右されたくないということだと思うんです。
そうです、値段で納得するわけではないです。だからといってビギさんのお店で、何十万というジャケットとかスタッフの方が薦めてこないと思いますし。
野澤さんは、旅行や出張が多く、遊牧民のような生活をされていますよね。何か洋服を選ぶときにこだわっていることはありますか?
持ち運びやすいことですね。東南アジアは、クリーニングの仕上がりがよくないこともあるので、自分で洗えてすぐに乾くこと、速乾性も大事。あとは、移動中にしわになってもみっともなくならない素材も、販売員の方がすすめてくれます。
僕は、沖縄とベトナムには、色々なTPOに対応できる服と靴が置いてあります。身軽に移動するのもいいですが、Tシャツだけでは困ることもありますから。
服が行動を制限しない、ということですよね。旅先でもTPOに応じた服があれば、いろいろな状況にも対応できますよね。
実際に旅に出て、品質の良さを実感することが何度かありました。
旅は非日常だから不便さを感じることも多い。そんなシチュエーションで快適さをくれる服は、野澤さんのライフスタイルに潤いを与えてくれていると言えるのかな。私たちが、いつも願っていることですが。
はい、服に助けられることも多いです。旅先ではもちろんですが、日常生活でも、ルックスは非常に重要ですから。
野澤さんはアジアの中での出張が多いそうですが、あちらのファッションはどうですか?
経済が成長していくと、その国の人たちの服装がカッコよくなっていきますし、きれいになっていくことをすごく実感しています。
今のタイのファッションは十数年前と違いおしゃれになってきていますし、ベトナムもあと数年でファッショナブルになっていくと思います。
それは生活にゆとりがなかったということなんですか?
たぶん、見ていなかったからだと思います。テレビでもおしゃれな服を着ている人を見る機会もあまりなかったでしょうし、洋服を売っているお店や市場、その品揃えに選択肢が少なかったり、偽物が多かったからだと思います。
経済が成長しておしゃれなお店が出てくると、マネキンに着せたファッションを目にしたり、旅行で来る外国人のファッションを見たりして、自然と変わっていくんだということを感じています。
昔の日本と同じですよ。僕らが20代の頃はそうだった。日本が経験した道を通っているというか、だからこそビジネスチャンスがあるという考え方もありますね。
野澤さんのようにIT業界にいると、服装にステレオタイプを持たれることも多いのでは…。Tシャツにジーンズ、といったような。
働いているときには、そういった格好も多いかもしれないですね。でも、うわべだけで、ジョブズのような人を真似するのは…、ルックスの重要性を理解していないかな。
たとえば、野澤さんのスタイルには明確な原点があって、メッセージがありますよね。TPOに合わせてルックスを効果的に活用してこそ、Tシャツにジーンズでも、スーツでも意味を成すんじゃないかな。ジョブズのような存在がクローズアップされて世の中を席巻したから、そういうイメージがあるのかもしれないですね。
僕は一人でなら、どんな大企業に出向くときでもネクタイはしません。自分で責任が取れるときはそうですが、誰かと一緒に行くときは、その人に恥をかかせないためにもネクタイをすることもあります。
野澤さんが、われわれのような洋服の小売業に求めることって何でしょうか。
私はアジアのことは詳しくありませんが、ヨーロッパについては勉強してきましてね。たとえば、イタリアでは、何百年も続いた専門店が軒を連ね、自分のブランドに対してプライドを持っている。ビジネスプランを作って成長を遂げたビッグブランドも数多くありますよね。自分のブランドを理解し、明確に打ち出すことが大切です。これから私たちがやるべきことがあるとすれば、ビギが特化している質の高いサービスのレベルをさらに上げて提供していくこと。ポテンシャルを磨いていくことだと思っています。
とにかく、ビギさんには浜松の街をカッコよくしていただきたい!
疲れた表情のビジネスマンしかいない街に魅力はないでしょう。おしゃれな大人があふれるような街づくりをしていただきたいですね。
ドアツードアで家と職場の往復をしている方が多いことも、野澤さんがおっしゃることに繋がっていくんだと思います。一番欠けているのは文化だと思うんです。
目標となるような人たちが街中に溢れるようになったら若者も集まってくると思うんです。
文化がないところには人も集まりません。
文化の意識を持つことが大切だと思います。われわれなら洋服を提供することですが、生活の中でエンジョイできるもののレベルを上げていかなければなりませんよね。
僕もそう思います。
自分の五感を刺激されるような街は魅力があります。野澤さんにはそういうアイデアを出していってもらいたいんです。
文化はみんなでつくり上げていくものだと思います。その中でビギさんが大事な役目を担って欲しいんです。
文化をつくるのには時間がかかりますが、お互いの分野で力を発揮して魅力ある街にしていきましょう。
今日は本当にありがとうございました。お話できてよかったです!
こちらこそ、ありがとうございました。